疾風のごとく駆け抜けるりぼん社の障害者運動奮闘記!小林敏昭さんにインタビュー!!! (3/3)

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障害児教育創作教材1「あっ、そうかぁ」

Q.障害者問題の中で、初期のころと現代の違いって何があるのでしょうか。それについてどう感じてらっしゃいますか?

A.昔は、障害者問題が可視化されていなかったとういかね。山奥の施設の中とか、家の中の座敷牢とかね。そういうところに障害者問題があったのだけれど、あってもみんながそこに目を向けなければ、関心を向けなければ無いのも同じ。世の中では障害者問題とか障害者差別は存在しないことになっている。

可視化されていなかった時代があった。その中で、だから、あえて街に出る。施設の中や家も拒否をして、街の中で24時間介護を付けながら自立生活をするという運動を始めた。今みたいに制度があるわけじゃないから、まずはひとを集めないといけない。当時は制度も施策もほとんどない状態だった。ただ街に出ると、差別という問題が露骨にぶつかってくる。それがよくわかった。「ああ、入店を拒否された」「バスを乗車拒否された」っていうのが日常的にあった。一歩出るとね、差別が見えるようになってくる。

今はね、制度とか施策も相当進んできたし、障害者の権利条約も批准して差別解消法が出来て色んな介護制度も充実してきた。まだまだ足りないことは足りないけれども、そういう違いは非常に大きいね。

ただ、障害者に対するみんなの意識の中が変わってきたのかというと、まだそんなに変わっていないように僕は思うわけです。

たとえば、出生前診断というのがあるんです。新型の出生前診断というのが4、5年前に日本に入ってきました。妊婦さんの血液を採取したらその中に胎児のDNAが混じっている。それを検査すると胎児に遺伝性の障がいがあるかないか分かるという検査です。非常に簡便で正確な新型の検査だと聞きましたね。

人間の染色体は23対。46本ある。そのうち22対は体をつくる染色体で、最後1対が性染色体です。染色体というのは大きい方から番号打つのだけど、13番目と18番目と21番目のこの3つの染色体が、本来2つないとあかんのに3本ある場合がある。これをトリソミーといいます。それを発見する検査なんです。

13、18というのはけっこう重篤な子どもが生まれる。1年以内に大体死んじゃう。21番目というのは長生きするのです。50歳、60歳まで生きる。21番目のトリソミーは、一般的にダウン症といわれている。新型の検査は21番目をターゲットにしている。すぐ死ぬのはもういい。長生きして社会に負担をかける障害者を生まれないようにするのが目的です。

障害児教育創作教材4「しまったぁ ゆめ編・風編」

これは新型の検査です。妊婦さんが殺到している。今まだ臨床試験の段階だから保険がきかないので、一人大体20万円くらいする。自腹を切ってそれでも行くんですよ、みんな。それはやっぱり障害もってる子どもは、生まれてほしくない。基本的にそんな思いがあって。生まれるくらいだったら胎児の段階で中絶しましょうという考え方が非常に強い。しかもそうやって医学とか薬とかがどんどん進歩してきたから便利に使えるようになった。昔はそれをやろうとしてもできなかったから。出生前診断は。

そういう便利さが逆に障害のあるなしのふるい分けを進めている。胎児や受精卵の段階から。そういう意味では昔はもっと露骨に差別があったけど、今はだんだんそれが見えにくくなってる。けれども、やっぱり人々が障害者に対して抱いている恐怖感とかね、嫌悪感みたいなものとかはね、あまり変わってないなと。逆に技術が広がって進歩してきている分だけじわじわと広がっている。そんな感じがする。

僕はそういう人々の心の中にある優生思想という問題。これは変わっていない。あるいは悪化している。ただ、街で生きようというときにいろんな制度はつかいやすくなったし、自分で働く場も相当増えたし、そういう意味では変わって来ている。そんな感じかな。

Q.この特集をご覧のみなさま、特に悩んでいる当事者の方へメッセージをお願いします。

A.ここにアクセスしてくる人は既に色んな情報を自分でつかもうとして動いている人たちだよね。それはすごく大事なことだと思うんだよね。

今の日本の社会というのはなかなか家族主義を越えられない。家族だけに任せたら大変だからというので、老人も障害者も、色々な介護制度、介護保険も含めて、そういう制度を作ってきたのに、まだやっぱり家族が何とかしろというそういう文化が強いと思う。

だから自分が家族と一緒に住んでいて、本当は「これ」をやりたいけれども、家族に迷惑をかけたくないからやらないとかね。本当は一人暮らしをしたいけれどもしないとかね。色んな制約を自分に課しながら生きている障害者って、結構まだ多いと思う。これをなんとかぶち破ってほしいね。そのために色んな人に出会ったり情報を入れたりしてほしい。そういうのが一番のメッセージかなぁ。

Q.今回の質問では伝えられなかったことや、何か伝えておきたいことなどがありましたらご自由にどうぞ。

A.ほぼ、言い尽くしたなぁ(笑)。だから、障害者問題というのはね、昔は個人モデルだった。障害者が社会で生きにくいのはその人に障害があるからだと。だからその障害を出来るだけ軽くすること。で、医療とかリハビリでなおしてあげること。それが障害者問題だった。昔は。今障害者自身は、社会モデルだといっている。障害者の人が生きにくいっていうのは、障害の所為じゃなくって、社会との関係において生きにくいんだと。社会にこそ問題があるんだと。「個人モデルから社会モデルへ」と障害者運動の人たちとかが言ってるんですけれどもね。これはすごく大事な事なんだよね。

特に若い人たちが活字を読まなくなったというのは影響しているのかもしれないけれど、それぞれみんながしんどいところを持っているんですよね。若い人たちや派遣の人たちがね働いても働いても楽にならないという格差社会とかがどんどん進んでいる。それを自分の所為にしてしまうみたいなね、発想が広がっている。自己責任とか言われてね。シングルマザーが生きにくいのは自分の所為だと言われる。そういう社会が徐々に広がっている。

そういう社会の中で障害者運動が、「個人モデルから社会モデルへ」と言った意味は本当はすごく大きなものだと僕は思っている。障害者の人たちだけじゃなくってね。他の人たちね、今の社会でしんどい思いをしている人たちがもっと社会にある矛盾みたいなところを見ていける、それがこの社会モデルの考え方なんですよね。

障害者はそうしないと、リハビリや薬を飲んで治る障害はほとんどないから、あるがままの自分を社会に認めさせないと生きていけなかった。だから、個人モデルはダメだ。社会モデルを主張しないといけない。ということに気が付くんだけれど。それは障害者だけじゃなくて、他のいろんな人たちも、そういう方向で世の中を見ていってほしい、目を向けてほしいというのが僕の思いですね。この「季刊しずく」でも、「だれ一人しめ出さない」というサブタイトルにはそういう思いが込められている。

記者.ありがとうございました。

お知らせ

●障害者問題資料センターりぼん社のサイト

http://www.hi-ho.ne.jp/soyokaze/

●被災障害者支援 ゆめ風基金

https://yumekazek.com/

人権啓発絵本「ともだち100まんにん」

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ペルオンはホープグループ、ミッション株式会社を母体にしたペルオン実行委員会が制作してるポータルサイトです。

障害の当事者が作る当事者目線のサイトが作れないかと思い、サイトを立ち上げました。ペルオンという名前はPersonnes handicapées(ペルソンヌ・オンディキャピー)の略で、障害者仲間という意味からとりました。

当事者会・支援団体・家族・地域・職業・年齢などの枠を超えて、障害者に関係する全ての人が連携して、さまざまなことにチャレンジし、障害者の可能性を探ってまいります!

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